業種別M&Aの動向

  • 業界別に、経営環境、経済動向、M&A取引事例、M&A戦略、主要企業などがひと目でわかるようにまとめましたので、 ぜひM&A戦略の立案、株価評価、組織再編手法などM&Aの情報収集にご活用ください。 

外食産業
外食産業とは、「店内で調理された食事を、その食事をする空間とともに顧客に提供する形態の業種」を指し、食堂、レストラン、ファーストフードや喫茶店などの、一般に「飲食店」と称する業種がこれに該当します。

外食産業の現状と動向

景気の回復傾向が強まり、外食産業においては客単価の増加と店舗数の拡大がみられ、売上高自体は僅かながら増加傾向にあると言えます。ただし、少子高齢化に伴う消費層、働き手の双方の減少により、市場規模はほぼ頭打ちと考えられている一方で、店舗数は増加していることから、働き手である従業員への負担増加が懸念されています。
 各企業は、中食市場への参入、東アジア圏を中心とした海外進出などの方策により、市場規模の拡大に努めています。さらに、人員不足を解消する手段として、中高年や外国人労働者の雇用を拡大しています。
また、外食産業は比較的寡占化していない業界であるため、M&Aによる事業規模拡大の余地が多くある業界であるとも言えます。外食産業は、その参入障壁の低さも相まって、中堅・中小企業間での事業・店舗単位での譲渡を中心としたM&Aが活発化しています。外食産業界を取り巻く環境は、依然として厳しい見通しとなっており、業績の悪化した企業による売却ニーズの増大が見込まれる事からも、さらにM&Aが活発化する可能性もあると考えられます。

食品業界(製造・卸等)
食品業界とは、食料品の供給を行う産業の総称であり、食品の加工産業のみならず、素材供給産業としての農業・水産業や、流通産業としての卸売業なども含まれると考えられます。食品業界に属する各事業者の役割は、食品の生産・加工・流通の各段階において、食品の品質と安全性を保持しつつ、その安定的かつ効率的な市場への供給維持に寄与する事と言えます。

食品業界の現状と動向

食品業界は、生活必需品を取り扱うことから、景気動向にあまり左右されない業界だと言われてきました。しかし、近年では少子高齢化に伴う人口減少や、消費者の節約志向の高まりから、食品業界を取り巻く環境は厳しさを増しています。
 国内市場では、低価格競争が激しさを増す中、各企業は資材の共同調達や共同配達の推進の他、生産拠点の集約や商品数の絞り込みなどのコスト対策に乗り出しています。しかし、国内市場中心の事業展開では高コストの抜本的な解決は難しく、少子高齢化により国内市場の縮小が見込まれる事もあり、成長市場を求めてアジアを中心とした海外進出の動きが積極化しています。市場拡大の可能性を秘めた海外市場に販路を求め、現地法人の買収や、合弁事業の立ち上げといった海外展開をみせる企業もあります。
 また、市場シェアの上昇や生産合理化を目標としたM&Aも増加しています。特に、食料品卸業界では企業再編が加速しており、総合商社主導によるグループ内再編を中心とした、経営資源の一元化、合理化・効率化による収益拡大を目指す動きが見られます。さらに、中堅・中小の卸売業者はその存続をかけて、大手企業へのグループ入りを図る動きが予想されるため、今後ともM&Aによる業界再編の流れは続くものと考えられます。

ソフトウェア・情報通信事業
ソフトウェアは、基本ソフトのOS とアプリケーションソフトに大別されますが、そうしたソフトウェアの開発に留まらない様々な職種の技術者が活躍する業界です。
 大規模なエンタープライズシステムを開発するソフトウェア会社、ハード・ソフト両面からシステム構築を行うSI(システムインテグレート)企業、また得意分野のソフト開発を行う独立系ベンダーなど多様な企業が存在します。

情報通信業(じょうほうつうしんぎょう)とは、情報の伝達や処理・加工・提供にかかわるサービスを行う業種または職種を指します。上記の様なソフトウェアを取扱うIT関係の各企業、有線・無線電話通信を展開する企業、およびマスメディア関係の企業がこれらに属すると言えます。

ソフトウェア・情報通信事業の現状と動向

ソフトウェア業界は、通信網の高度化やハードウェアの高機能化・多様化により実需の拡大は手堅いものの、企業の経費削減傾向によりサービス単価は年々下落しています。
ソフトウェア業界の産業構造は、建設業のように、元請け→下請け→孫受けといった受注構造があるほか、大手企業の東京一極集中、知的産業でありながら労働集約的要素が強い、といった課題もあります。
ソフトウェア業界においては、リーマンショック以降の顧客企業の業績回復にともない、アウトソーシングやクラウドサービスへの新規IT投資の回復期待が高まりつつあるものの、円高への懸念等の先行き不透明感から、結果的にIT投資抑制が続いています。
国内のソフトウェア市場が縮小する一方、高い経済成長を続ける中国を中心としたアジア市場への進出や、グローバルなITソリューションを展開するために海外拠点を拡大するなど、企業の海外戦略が目立っています。

通信業界では、iPhoneを中心としたスマートフォンの台頭により、各キャリアの顧客獲得競争が激化しています。また、ソフトバンクが独占していたiPhoneの販売権が、auにも割り当てられたことにより、いわゆる「ガラケー」からスマートフォンへの乗り換えに拍車がかかっています。とはいえ、こうした急速な普及が進めば、ある程度の段階で需要が頭打ちになるリスクも当然ながら存在するため、各社の競争はより厳しいものとなっていくことが考えられます。
また、通信業界は、インフラ整備に巨額の投資が必要となる設備投資型産業であるため、数少ないプレイヤーの間での通信帯域やインフラ拡充、顧客基盤獲得のためのM&Aによる大型再編が予見されます。

スマートフォンやタブレット端末の普及に伴い、情報セキュリティに対するリスクも高まっているため、今後は、セキュリティ分野での需要増加が見込まれています。

エステティック・美容サービス業
エステティック業とは、人の皮膚を清潔にし、もしくは美化し、体型を整え、または体重を減ずるための施術を行なう事業をいいます。
 医師が行なう分野とそれ以外の分野に大きく二分されますが、その根拠となる法律やエステティシャンの公的な資格制度がなく、医師法違反等のトラブルが発生しやすい業界でもあります。

理容業とは、頭髪の刈り込み、顔そり等の方法により、容姿を整えることを業とするものをいい、理容師法に基づく理容師免許が必要となります。美容業とは、原則的に1人の美容師が1人の顧客に接し、個々の顧客の意向を汲んだ上でそれぞれの美容師が判断し、セット、カット、パーマネント等の施術を行なうことを業とするもので、美容師法に基づく美容師免許、または理容師法に基づく理容師免許が必要となります。

 エステティック業界、理美容業界ともに大手企業と中小零細企業との二極化が顕著です。業界を統制する法律が存在せず、他業種参入が容易で競争が激しい業界です。.

エステティック・美容サービス業の現状と動向

消費者の節約志向が影響し、施術回数の減少や、低価格メニューの選択などの動きがみられます。エステティックサロンや、近年増加するネイルサロンなどは、開業にあたって国家資格や規制がないため、参入障壁の低さと低価格競争の激化が、業界全体の伸び悩みを生んでいます。

理容・美容業界も、同様の低価格競争にさらされており、美容院各社は頭皮マッサージやネイルケアといった、カット以外のサービスによる客単価の引き上げに取り掛かっています。

エステティック・美容業界はその価格競争による収益性の低さや、労働環境の問題なども相まって、特に国内市場はその先細りを危惧する声もあります。その一方で、日本のサービス水準の高さを武器に、主にアジアなどを中心とした国外へと市場を開拓していく動きも見られます。